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ビジネスで必要とされる「認知的スキル」

最近読んで感銘をおぼえた書のひとつに、山田昌弘著「なぜ若者は保守化するのか」(東洋経済新報社刊)がある。
山田昌弘氏は、社会学者で、パラサイトシングルとか格差社会、そして今大流行の「婚活」という言葉を世に出した方でもある。
何故当代の若者が保守化したのか、読後はしごく納得してしまったのだが、そのあたりは実際に本を読んでいただくことにして、今日は、本の中で「ビジネスで必要とされる認知的スキル」と題された部分をとりあげてみたい。


まず、資本主義社会とは、他人の欲求を満たすことによっておカネをもらう社会である、と書く。
「だから、ビジネスでおカネを儲けるには、他人の欲求を満足させるための商品やサービスを提供しなければならない。」
当然のテーゼだ。
「一通りのモノがそろっている豊かな社会では、人々の欲求の質に変化が起き、ありきたりのものでは満足しなくなる。(中略)生活するための必要最低限の商品、サービスは供給されるが、その価格は極度に低下し、それで利益を出すことはますます困難になる。」
何か、音楽業界とか放送業界にも関係してきそうな話である。


「従来の商品、サービスにプラスアルファがついていないと利益が出る商品ができない。(中略)商品やサービスに付着したプラスアルファを消費するのが、ニューエコノミーの特徴である。」と書き、プラスアルファの欲求には次のような特徴があると続ける。


①新しい欲求は際限がない。商品自体の賞味期限は長くとも、プラスアルファ部分はすぐに効用が低下する。つまり飽きられる。ビジネス側は、常に新しいものを提供する必要がある。
②プラスアルファ部分は個性的である。ある人が満足するものだからといって、別の人が満足するとは限らない。個性化した感性の中核にヒットしなければ、見向きもされない。つまり、いくら似ていようとも二流とみなされたサービスは売れないのだ。
③プラスアルファの部分の内容は、本人も事前にはわからず、消費してはじめて満足を得る。新しい経済では、消費者はこのような商品やサービスがほしい思って求めるのではない。特定の商品に出会うことで、自分の内側に隠れていた感性が呼び覚まされ、それを消費して満足に至るのだ。


商品自体は、さほど変わらない、例えば服は服だし、カバンはカバン、それ自体の機能は変わるものではない。
だが、それに付随するもの、例えばデザインであったり、それを使う時には、こういうものと組み合わせるとか、ついでにこういう機能も加味することによって、別の欲求を生み出すということなのだろう。

また個性化した感性の中核にヒットするというのは、重要なファクターである。
広告業界では、これを「刺さる」と言ったりするようだ。
心に刺さるというか、ユーザーの感性に刺さるとか表現する。
刺さらないものは、外形が同じであっても相手にされない、ま、そういうものなのだろう。


消費者がこういう商品を求めているという時代ではないというのも示唆的だ。
消費者のニーズは消費者自身はさほど自覚していない、確かにそんな気がする。
そういう商品を目の前に置かれて、初めて自分の中のニーズに気づくということ、そう、その通りなのだ。
自分の心もそう、ある一つの言葉、ある一つの思想体系に触れて初めて自覚するということ、それが人間の認知というものだ。
初めに真理ありき、人の心は後についてくるだけだ、ややこしい話だがそういうことだろう。

デジタル系の商品なんて、本当にそれを外から眺めているだけでは何かよくわからない。
ブログというのもそうだし、ツイッターも又そうだろう。
やってみないとわからないのが現実なのだ。
外から眺めているだけで、ブログとはこういうもの、ツイッターとはこういうものという言説を語る人がいるが、それが如何に空論であるかは、既に皆さんご理解されていることだろう。
自分の内側の感性が、ブログにもツイッターにも呼び覚まされることがないなら、それを消費して楽しんでいる人の気持ちはわかるはずはないのだ。


ウェブサイトを眺めているだけの放送局の管理者や経営者に、サイトビジネスの本質はわからないと本ブログで書いたと記憶しているが、つまり刺さることの原体験がなければ、ユーザーのニーズに応答できないということなのだと思う。


さて、田中昌弘氏は、プラスアルファを作り出すために必要な能力として3つのCをあげている。
①新しいモノや組み合わせを考えつく能力ー創造力(Creativity)
②相手が何を欲しいかを察して引き出す能力ーコミュニケーション力(Communication)
③新しい感性に訴え、「クール」であることを判断できる能力ー美的センス(Cool)
これらを認知的スキルと呼び、こうした能力を持つことがビジネスで成功する条件とされているのだ。


私は、特にこの3つのCの中で、コミュニケーション力を強くあげておきたい。
結局人とどれだけ多く交わっているか、社会性を持っているかが鍵になると思うからである。
放送局ならリスナーとのコミュニケーション、音楽業界なら音楽ファンとのコミュニケーションである。
とにかく、消費者を泥棒と呼んだり、消費者の楽しむためのツールを一方的に指定し、折角自発的に工夫して作られたものを一方的に無力化するなんて愚の骨頂以外の何者でもないだろう。
長くなるので、そのあたりを具体的な話を交えて、次回にもう少し。




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