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ヒット曲とは何か~あるラジオマンの一考察(4)

●私の中のヒット曲史
人口に膾炙しない限り、ヒット曲とは呼べないのではないか、それが私の持つ違和感の根源だ。
考えてもごらん。
チャートの操作が仮にあったとしても、83年ごろのベスト10の曲を知る人は多かったはずだし、歌える人もそこそこいた。
2013年、今はどうだろう。
モーニング娘。の新曲がウィークリー1位になったということがラジオから流れ、メンバーが大いに喜んでいた。
これで、リリースした3曲連続1位獲得、紅白の出場も可能性が大きくなったという。
6年間出ていない、だからどうしても今年は出たい、とリーダーが語っていた。
その気持ちはよくわかる、でも、ちょっと考えてみよう。
一体、その1位になった3曲のタイトルをどれだけの人が口に出して言えるだろう。
自慢じゃないが、私は一曲も言えない。
アイドルの世界とはそれほど遠い場所にいない(最近あるアイドルのプロデュースまでやっている)私なのに、その3曲のタイトルの欠片さえ思い出せない。
何だろ、それで3曲連続1位獲得、紅白決定的って?


参考のために調べた結果を書いておく。
1/23発売 Help me!!
4/17発売 ブレインストーミング/君さえ居れば何も要らない ※両A面
8/28発売 わがまま 気のまま 愛のジョーク/愛の軍団 ※両A面
そういえば、「Help me!!」は何となく知っている。
PVはなかなかのものだったし、踊りも冴えていた。
でも、後の2曲は全然知らない。


いや、モーニング娘。の悪口を書く為にこの話をしたわけではない。
私は、今のアイドル達を肯定している側の人間だ。
どういう形であれ、一生懸命やっている若い女の子たちが少しでも喜んでくれることはいいことだ。
ただ、1位になったからヒット曲扱いすることが、業界にとって本当にいいことなのか、そんなことをしていたら、ヒット曲なんか自分たちには関係ない存在だというユーザーが増え続けるのではないかということだ。
ヒット曲がヒット曲ではない、いわゆるヒット曲というブランド価値の毀損、自己否定に繋がりはしないかと。


私のヒット曲史を語ってみる。
もちろん、私が子供の頃、本当に古い話だ。
初めていい曲だなと思ったのは、何だったか。
多分、菅原都々子の「月がとっても青いから」ではないだろうか。
1955年(昭和30年)のヒット曲。
100万枚売れたとある。
銭湯の行き帰り、空にお月さんが輝いていると、大人たちは皆この曲を歌っていた。
「月がとっても青いから~遠回りしてかえろ~♪」
実際遠回りしたのかどうかは知らない、でも、知らぬ間に私も覚えた。
ラジオからも流れていた。
鼻にかかった不思議なビブラートをかけた歌い方が耳にも残った。
気持ちをうきうきさせてくれた。
ちょうどお月さんが私たちに夢をくれたように。


当時は、ヒット曲が飽和していた時代ではない、まだまだ私たちの耳の中はスカスカだった。
そのスカスカの中に、ラジオが多くのコンテンツを運んでくれた。
そういえば、戦後の荒廃の中、ラジオから流れてくる「リンゴの歌」が、当時の人たちの心をどれだけ励ましてくれたか、などという言い方を聞いた方も多いことだろう。
私たちのスカスカの耳を癒すように流れてきた音楽、それを私たちはヒット曲と呼んだ。
「歌は世につれ、世は歌につれ・・」という今ではあまり使う人がいなくなった言葉、この歌も又ヒット曲だった。
じゃ、その曲はどうやって人々に伝わって行ったのか、言うまでもない、まずラジオから流れ、そして人々が実際に歌い、それが又人々に伝わって行ったのだ。
一昔前、音楽芸能雑誌の付録は歌集だった。
ヒット曲の歌詞が百曲以上も収められていて、それ目当てに買う人も多かったはずだ。


「月がとっても青いから」、100万枚売れたというのは凄いなと思う。
今とはマーケットの規模も違うし、第一、その価格は相当のものだったろう。
ちなみに昭和30年当時のシングル盤は300円だったらしい。
その時の物価は今の10分の1以下、サラリーマンの平均収入が月3万円ぐらいというから、シングルレコードは今なら10倍の3000円ぐらいの価値だろうか。
ひとことで言って簡単にできるる買い物ではない。
ちなみに私がレコード買うようになったのは中学生になってから。
親から正式に月1000円とかのお小遣いをもらえるようになってからだ。
最初に買ったレコードはビートルズの「恋する二人」、330円である。
1枚買えば、2枚目はしばらく買えない。
LPレコードはモノラルが1500円、ステレオが1800円。
最初に買ったLPは、やはりビートルズの「ヘルプ!」。
友人のお姉さんがレコード会社に勤めていたので、7掛けで買えた。
それでも1260円である。


いや、昔を懐かしむ為に書いているわけではない。
それぐらい、レコードを買うことは大変だったということを言いたいのだ。
それゆえ、レコードの売上枚数=ヒット曲というのは、ちょっと違うのではないかと疑問を呈しているのだ。
レコード買えない人はヒット曲とは無縁なのか、それは絶対に違うと断言しておきたい。
ヒット曲とは、みんなが知っている曲、皆が歌える曲、それについて一人一人が何らかのストーリーを語れる曲でなければならない。
私は絶対的にそう思っている。
ある日、ラジオから流れてきた曲、それは何だろうと思う、どうしても知りたい時は放送局に電話してでも聞こうとする。
タイトルを知れば、もう一度聞く為にラジオ曲にリクエスト。
あるいは、その曲をかけてくれそうな番組を探し、ただただその曲がかかるのを待っている。
今なら、買えば済む、あるいはyoutubeで運よく誰かがアップしてくれているかもしれない。
でも、時代が違う、レコードを簡単に買えるほど、私たちは金を持っていない。
その点ラジオはいい、無料で音楽を聞かせてくれる、曲についての説明もしてくれる、リクエストにも応じてくれる。
だから、ラジオさえあればヒット曲は生まれた。
リクエストが多く集まる曲は、それだけ大衆が支持されていること、支持されている曲は皆がタイトルをもちろん覚えるし、そのうち歌詞とメロディも覚えてしまう。
知っていて当然なのである、それがヒット曲なのだから。


いつからヒット曲が、結果としてのヒット曲でなくなってしまったのか。
レコード会社が仮想ヒット曲を量産し、多くの大衆をヒット曲から疎外させてしまったのはいつからなのか。
この話、長くなるので、また次回に書き続けようと思う。
私の考え、色々誤りや思い違いがあるかもしれない。
皆さんからのご指摘、ご意見など、また聞かせてもらえればうれしい。




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コメント

[C56] とはいえ・・・

ひさしぶりの投稿です。

ヒット曲とはいえ、インターFMみたいにずーっといろんな音楽ばかり流しているとヒット曲ってうまれないものなんですかね?

やはりヘビーローテーションしないと、曲まで覚えないし。。。
  • 2013-09-19 12:41
  • タロー
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Author:フロムさん


100以上の番組、ライブを中心としたイベント、舞台、映画など、専らクリエイティブな世界に身を置いて30年。
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