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シリーズ ラジオ制作者の心得(3)~一次情報に徹する・2

朝日新聞OBで古巣の局の偉いさんだった白木龍雄氏には、ジャーナリストの心得を色々と教わった。
社内での人間的評価は決して高かったとは言えない白木氏だったが、示唆に富む話は時々してくれたものである。
その一つに「マスコミに取り上げてもらいたかったら、それが一次情報であるということを主張しろ」というのがあった。
伝聞の話とか、誰かから聞いた話なんていうのは、例えば新聞記者には響かない。
書いてもらいたければ、そのニュースソースを連れて行け、あるいはそのニュースソースを具体的に示せということだった。
これは事件性がありなしという話ではない。
例えば、今度こういう番組を新聞で取り上げてもらいたければ、一次情報であることを思い切り主張したものにしろということだ。


整った資料、例えば印刷したものとか、ワープロで打ったものを持っていくなとも言われた。
全部手書きにしろ、それもコピーでなく、自分で実際に書いたものを持って行けと。
整ったものは、マスコミ人は見飽きている。
手書きで書いたものは、それ自体がオンリーワンというイメージがある。
どこのマスコミにも同じように出しているとは思えない、貴方だけに提出しているのだというメッセージが伝わる。
本気度も違って見える、と氏は言った。
なるほど、そういう一次情報という考え方もあるのかと思った。
マスコミは、こちらから持ち込むものは一次情報しか相手にしないのだ、多分そういうことなのだろう。
どこにでも出されたもの、例えば新聞に載った情報、雑誌で紹介された情報、それに放送で流された情報だけで番組を作るなという教えでもある。
きっかけは二次情報でもあってもいいが、そこからどう一次情報にたどり着くかに制作者のスキルが問われる。
どこにでもある情報を誰でもがする方法で紹介しても、誰の心にも刺さらない。
要は一次情報をどうちりばめるか、そこに人の納得が得られるのだ、多分そういうことなのだろう。


FMなら、やはり音楽には凝ってほしい。
ネットにある情報をそのまま紹介するのではなく、もっと一次情報に接近する努力が必要だ。
日本のアーチストなら、制作者にアプローチするのも重要だし、業界の重鎮とも情報交換するぐらいの気概を持ちたい。
海外アーチストなら、来日した時に少しでも時間がとれればと交渉する努力がほしいし、だめでも実際のメッセージを得られないかと関係者に働きかけて欲しい。
ゲストのブッキングだって、レコード会社からの依頼にただ応えるだけではなく、こちらから是非この番組に出てほしい、この番組にはこれだけのメリットがある、待っているリスナーがこれだけいるというぐらいの積極的なプロモーションも望まれる。
とにかく一次情報が番組の基本であると考えれば、そういう普段の努力が必要なことぐらい自明になるはずだからだ。


そう、ある洋楽番組を専門にしていた先輩ディレクターのことを思い出した。
彼は、まもなく会社が10周年を迎えることを見越して、1年ぐらい前から来日アーチストに片っ端からお祝いコメントを依頼し、デンスケ(取材用テープレコーダのこと)とマイクを持って楽屋を訪ねて行っていた。
外タレさんは、そういうことをあまり拒まない。
これもプロモーションだ、どうせ日本に来ているのだから、できるサービスは何でもどうぞというスタンスのようだった。
おかげで、10周年記念特番の時、ビッグタレントのお祝いコメントがキラ星のように流れたのだ。
今は、こんなこと誰かやっている?
社員ディレクターでない限り、こんなことを実践するのは困難かもしれない。
社員プロデューサーは、ここまで地道な努力はしないだろう。
彼らはただ管理しているだけ、外から持ち込まれるものは対応するが、自分でそれを構築する労力を使おうとはしない。


だいたい、番組なんか誰でも作れる、偉そうにディレクター面するんじゃない、という管理職が放送局に増えたような気がする。
自ら放送局のディレクターの位置を落としこめているとしか言いようがない上司だ。
本当に能力のあるディレクターの考えることは、単なる管理専門の上司とは根本的に違う。
その能力を発揮する機会を奪うな、本当の番組を制作する、それは神との対話からしか生まれないのだという想像力すら持てないものは、つまらない口出しをやめよ。


二次情報で番組を作ればいい、その方が安上がり、大した人材もいらないし、取材費も節約できる。
情報はリスナーからメールでもらえばいい、自分で探そうとするのは止めはしないが、残業代は払わんからな。
貧すれば鈍する。
ここには制作者の心得以前の世界が広がっている。
ラジオなんか誰でも作れる。
そんな、自らラジオを卑下する姿勢は、嘆かわしいと言わざるをえない。



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